反復測定ANOVAの正確な報告が重要な理由
反復測定分散分析(Repeated Measures ANOVA)は、同じ参加者を3つ以上の条件で測定する場合の標準的な統計手法です。患者の経時的な回復追跡、実験条件間のパフォーマンス比較、学習効果の時間的変化分析など、社会科学・行動科学の全分野で広く使用されています。
しかし、反復測定ANOVAのAPA報告は通常の一元配置分散分析より複雑です。球面性の仮定を検討し、必要に応じてGreenhouse-Geisser補正を適用し、被験者内効果量を報告する必要があります。
APA反復測定ANOVA報告の必須要素
APA第7版で反復測定ANOVAの結果を報告する際に必ず含めるべき要素:
- F 統計量(イタリック体)
- 自由度:効果(分子)とエラー(分母)、括弧内に表記
- 正確な p 値(小数点第3位まで)
- 効果量:偏イータ二乗(η2p)
- 球面性検定の結果(Mauchlyの W)
- 補正方法(球面性が違反された場合、Greenhouse-GeisserまたはHuynh-Feldt)
基本テンプレート:
F(df_効果, df_エラー) = X.XX, p = .XXX, η2p = .XX
ステップ1:記述統計の報告
各条件または時点の平均値と標準偏差を表または本文で提示します。
シナリオ例: 40名の参加者を対象に、ベースライン、治療後、3ヶ月フォローアップの3時点で不安スコア(0-100)を測定しました。
| 時点 | n | M | SD | |------|-----|------|------| | ベースライン | 40 | 62.50 | 12.30 | | 治療後 | 40 | 48.75 | 11.85 | | 3ヶ月フォローアップ | 40 | 45.20 | 13.10 |
APA形式で記述:
不安スコアの平均はベースライン(M = 62.50, SD = 12.30)から治療後(M = 48.75, SD = 11.85)に減少し、3ヶ月フォローアップ(M = 45.20, SD = 13.10)でも低水準を維持した。
ステップ2:Mauchlyの球面性検定の報告
球面性(sphericity)とは、すべての条件ペア間の差の分散が等しいという仮定です。反復測定ANOVAではこの仮定が必要であり、必ずMauchly検定の結果を報告します。
球面性が満たされた場合:
Mauchly検定の結果、球面性の仮定が満たされた(W = 0.94, p = .312)。
球面性が違反された場合:
Mauchly検定の結果、球面性の仮定が違反された(W = 0.72, p = .008)。したがって、Greenhouse-Geisser推定値を用いて自由度を補正した(ε = 0.78)。
どの補正を使用すべきか?
- Greenhouse-Geisser:ε < 0.75の場合(保守的、デフォルト推奨)
- Huynh-Feldt:ε ≥ 0.75の場合(やや緩い)
ステップ3:ANOVA結果と効果量の報告
球面性が満たされた場合(補正なし)
反復測定分散分析の結果、時間が不安スコアに対して統計的に有意な効果を示した(F(2, 78) = 18.45, p < .001, η2p = .32)。
球面性が違反された場合(Greenhouse-Geisser補正)
Greenhouse-Geisser補正を適用した反復測定分散分析の結果、時間が不安スコアに対して統計的に有意な効果を示した(F(1.56, 60.84) = 18.45, p < .001, η2p = .32)。
偏イータ二乗の理解
偏イータ二乗(η2p)は反復測定ANOVAの標準的な効果量です。
解釈基準(Cohen, 1988):
| η2p | 解釈 | |---|---| | .01 | 小さい効果 | | .06 | 中程度の効果 | | .14 | 大きい効果 |
例では*η*2p = .32は大きい効果に該当し、個人差を統制した後、時間が不安スコアの分散の約32%を説明することを意味します。
偏イータ二乗 vs. イータ二乗
反復測定デザインでは必ず偏イータ二乗を報告してください。通常のイータ二乗は被験者変動を分母に含むため効果を過小評価する可能性があります。SPSSでは「Partial Eta Squared」と表示されます。
ステップ4:事後ペアワイズ比較の報告
全体のANOVAが有意な場合、ペアワイズ比較でどの条件間に差があるかを特定します。
Bonferroni補正を適用した事後ペアワイズ比較の結果、不安スコアはベースラインから治療後へ有意に減少し(Mdiff = 13.75, SE = 2.41, p < .001, d = 1.14)、ベースラインから3ヶ月フォローアップへも有意に減少した(Mdiff = 17.30, SE = 2.68, p < .001, d = 1.36)。治療後と3ヶ月フォローアップ間の差は統計的に有意ではなかった(Mdiff = 3.55, SE = 2.15, p = .312, d = 0.28)。
完全な報告例
結果
不安スコアの平均はベースライン(M = 62.50, SD = 12.30)から治療後(M = 48.75, SD = 11.85)に減少し、3ヶ月フォローアップ(M = 45.20, SD = 13.10)でも低水準を維持した。Mauchly検定の結果、球面性の仮定が満たされた(W = 0.94, p = .312)。
反復測定分散分析の結果、時間が不安スコアに対して統計的に有意な効果を示した(F(2, 78) = 18.45, p < .001, η2p = .32)。Bonferroni補正を適用した事後比較では、ベースラインと治療後(Mdiff = 13.75, p < .001, d = 1.14)、ベースラインとフォローアップ(Mdiff = 17.30, p < .001, d = 1.36)間に有意差があったが、治療後とフォローアップ間の差は有意ではなかった(p = .312)。
よくある間違い5つ
1. 球面性検定の省略
査読者は必ず球面性の報告を確認します。仮定が満たされた場合でも明示的に記述してください。
2. イータ二乗と偏イータ二乗の混同
反復測定デザインでは必ず*η*2p(偏)を使用します。
3. 自由度の補正漏れ
球面性が違反された場合、補正された(非整数の)自由度を使用する必要があります。
4. 事後比較の効果量省略
全体の*η*2pだけでなく、各ペアワイズ比較のCohen's dも報告してください。
5. p値の書式エラー
APA第7版は正確なp値を要求します(例:p = .013)。p < .001の場合のみ不等号表記が許容されます。
自分のデータで分析する
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